貯留層技術

地下の流体がどのように流れるか、その将来がどうなるかを推定することは、地下流体の資源管理や環境保全のために重要な技術です。

当社では、そのために必要な計測技術(圧力・温度モニタリング、トレーサー式二相流量測定、地下トレーサー)、解析技術(数値シミュレーション、水理解析)、データ管理(データベース)、発電設備(カリーナサイクル)をはじめとする様々なハードウェアとソフトウェアを提供しています。

特に、当社が独自に開発した汎用地下可視化データベース(G★BASE)は、地熱・高レベル放射性廃棄物地層処分・地球科学分野で利用されています。また、米国ローレンスバークレイ国立研究所が開発した地下3次元多相熱流体解析シミュレータ(TOUGH2)に関しては、十数年の利用実績を経て、地熱貯留層評価をはじめとした様々な分野での解析業務だけでなく、導入・教育までを含めた総合コンサルタントを行っています。

貯留層技術

1.地質・地化学調査

地質調査では対象地域の山野を踏査し、地層や岩石、断層などの分布を明らかにするとともに、これらを区分し、区分された地層や岩石の分布、構造、さらにはそれらの総合関係を明らかにします。結果は地質図、地質断面図、層序図などにまとめます。

日本では、通常、地層の上は植生に覆われており直接見る事が出来ません。一方、河川や沢では水が流れ表層が削られているため、地層が露出しています。また、林道などでも林道の敷設のために山肌を削るために地層が露出している場合があります。地質調査ではこの様な河川や沢沿い、林道沿いなどを踏査し、地層の情報を集めます。また、必要に応じて岩石のサンプルを採取し、顕微鏡による観察や、X線分析をはじめとした各種分析を通して、岩石の種類などを特定します。更に、既存の調査結果(各種文献・報告書)、物理探査(主にMT法や重力探査)結果、地化学調査結果、坑井調査結果など、参照可能な情報を合わせて解釈し、地質図などを作成します。

地化学調査では、地熱流体の化学組成および同位体組成をもとに地熱流体の起源や生成機構に係るデータを集めることで、地質等の情報とともに流体温度の推定や貯留層モデルの検討を行います。また、地熱流体の利用に対する化学的な課題として、スケール生成や熱水性状による配管等の腐食問題に係る可能性の有無等を検討します。

当社では、地熱地域を対象とした地質・地化学調査を実施し、各種調査結果と併せて解釈し、地熱構造を調べます。なお、地化学調査においては、米国Thermochem社と提携し、ミニセパレータを使用した蒸気・熱水に係る地化学サンプリング作業、ならびに主要成分・同位体に係る分析・解析サービスを実施しています。

地質調査(ボーリングコア)
地化学調査

2.地熱貯留層評価

地熱開発は開発初期から広域調査、概査、精査と調査ステージが進み、精査の後半では目標とする地熱発電事業が可能であるか評価が行われます。地熱貯留層評価は同評価を行う為に実施されますが、通常、目標とする発電規模を目標とする事業期間維持できるだけの資源量が期待できるかを評価します。また、地熱発電所の運転開始後においても、地熱貯留層の適切な管理の為に地熱貯留層評価を行います。この評価手法としては数値モデルを用いた3次元地下水流動シミュレーションが行われます。
地熱貯留層評価の目的は以下となります。

  • 地熱開発の段階においては、生産(発電)規模を決め、生産井・還元井の配置を計画すること。
  • 発電(生産・還元)が開始された後は、生産井・還元井の再配置や追加井の掘削計画を検討する、または発電規模のスケールアップの可能性を検討すること。

通常、地熱貯留層評価は以下の様な手順で行われます。

  1. 地熱系概念モデルの構築
    各種調査結果を総合的に解釈し、地熱貯留層の構造をモデル化する。
  2. 数値モデルの構築
    地熱概念モデルを基に3次元の数値ブロックモデルを作成する。
  3. 自然状態シミュレーション
    生産・還元前の地熱貯留層の熱水対流系を数値モデル上に再現する。これにより数値モデルを最適化する。
  4. ヒストリーマッチングシミュレーション
    生産・還元試験の履歴が適切に再現される様、モデルを最適化する。
  5. 生産・還元挙動シミュレーション
    目標とする発電規模を維持するために配置する生産井、還元井への生産・還元を想定する事業期間、例えば30年間安定して維持できるかを評価する。

当社では、国内外の地熱貯留層評価に最も利用されているシミュレータである、TOUGH2/3を用いた評価業務を実施しております。

NEDO促進調査報告書より

NEDO促進調査報告書より

3.地下情報データベース

当社では地下資源(主に地熱分野)や放射性廃棄物地層処分研究の各種地下データ管理のためのデータベースシステム(G★Base)を開発しています。同データベースはリレーショナルデータベースであるPostgreSQL上に構築されたデータベース部と、同データベース部にアクセスするためのグラフィックインターフェース部より構成されています。
G★Baseでは以下の様な情報を取り扱う事が可能です。

  • 地形等高線、道路・施設位置図、衛星画像ほか
  • 地質図、変質帯分布、断裂系分布、地表水・温泉水調査位置図ほか
  • 坑跡、ケーシングプログラム、逸水、地質柱状図、岩相別構造等高線図ほか
  • 各種検層データ、コア調査結果、フラクチャ面ほか
  • 地表物理探査(電磁探査、重力、磁力、微小地震、AE計測ほか)
  • その他の地表調査(地温分布、土壌ガス調査、温泉水調査ほか)
  • 坑井試験(噴気・還元記録、PTS検層、坑内圧力観測、坑口化学成分、トレーサほか)
  • 発電記録(生産・還元記録、坑内圧力観測、坑口化学成分、トレーサほか)
  • 貯留層評価モデル(最適モデル、計算結果ほか)

また、G★Baseでは地熱分野で最も利用されている貯留層シミュレータである、TOUGH2/3の計算結果を既存の地下情報と併せて表示するポストプロプロセッサの機能を有しています。

G★Baseの検索・表示例

4.地熱総合解析

地熱開発は開発初期から広域調査、概査、精査と調査ステージが進み、各ステージでは地表調査や坑井調査などが実施されます。調査ステージでは地表調査や坑井調査が行われ、ステージが進むにつれ情報が蓄積されます。

地熱総合解析では、各調査ステージにおいて得られた、地表調査(地質調査、物理探査、地化学調査)、坑井調査(坑内地質調査、検層、噴気試験)各種情報を基に地熱構造について検討し、地熱系概念モデルなどを構築します。

地熱系概念モデルは地熱開発の各段階で検討し、地熱有望域の検討や資源量の評価などにも参照されます。
当社では、同作業では自社開発の地熱データベースシステム(G★Base)や地熱構造解析ツールのLeapfrog Geothermal(※)など各種ツールを用いて品質の高い総合解析業務を提供しています。

※Leapfrog GeothermalはSEEQUENT社が提供する地熱構造解析ツールです。

4.地熱総合解析
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